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精神保健福祉のしごと

昨日は、全国精神保健福祉担当者会議でした。

「精神保健福祉」というのはわかりにくいかもしれませんが、
端的にいうと「精神障害/精神疾患を抱えた人」についての話です。

弁護士が関わる局面で言えば、
精神病院に入院した(あるいは、させられた)方が、
そこから「出たいのに、出られない」という場合の支援の話です。

「退院請求」とか「処遇改善請求」とか言ったりします。

1:強制入院のこと ー精神保健福祉法ー

日本では、精神障害/精神疾患を抱えた人については、
精神保健福祉法によって「自傷他害のおそれあり」という要件等の下で、
「本人の意思に反した強制入院(措置入院)」ができてしまいます。

つまり、精神の障害や病気で、
「自分のことについて合理的な判断がつかなくなっていて、
 自分を傷つけたり、周囲を害する『おそれ』がある」という状態と判断される場合は、

「本人に代わって、家族や医師の判断で、
(本人が嫌がっても)入院をさせて治療をしましょう」という法律があるのです。

これって、なんとなく「気持ち悪い」法律ですよね。
病院への収容が、本人の意思に反して、強制的に行われてしまうんですから。

2:本来的な要件は?

もちろん、入院してこそできる効果的な治療があって、
短期間で元気になって出てこれる見込みがあるであれば、
こういう仕組みにもある程度、合理性があるでしょう。

だから本当は、
「強制入院によって、自発的な通院ではできない、
  効果的な治療方法が想定できる場合」という条件があるべきなんでしょうね。

また「必要な治療が終わったら、速やかに社会に戻すこと」という条件もないと、
必要以上に長い期間、病院にいなければいけないことになりそうです。

というのも、この法律って、
あくまで「本人の治療」のために使われるべきですからね。
病院って、あくまで治療のための場所ですし。

なので、治療に必要な限りで、ちょっと強引だけど、
「その意思を無視しても、本人のためになることが明らかな場合」にだけ、
こういう制度を発動して、その治療が終われば、
すぐに社会に戻すというのが制度本来なのだと思います。

3:でも日本の現状は・・・

とはいえ、なんでまた弁護士が、
全国精神保健福祉担当者会議なんてネットワークを持っているかと言うと、

この制度は、そういった本来の形で使われていないケースが多く、
合理的な治療期間を超えても入院が継続しているケースが相当あるからなんです。

日本は先進国の中でダントツの、
精神病院(ベッド数)、入院者数を持ち、
平均的な入院期間もとても長くなっています。

日本人が特に、精神病になりやすい体質だったり、
精神科に入院するのが好きな民族ってわけでもないですよ。

じゃぁ、どういうことなのかと言うと、
日本の精神病院は、障害や疾患を持つ人々の、
「社会からの排除と隔離の受け皿」になってしまっている現状があるからなんです。

すなわち、治療を続けて、
もはや有効な手段を見出せない状況になった段階でも、
「なかなか退院をさせてもらえない」と言う状況があるんですね。

こうなると、本人にとっては、監禁されているのと変わらない。
そんな場合に、弁護士が関わって「退院請求」をすることがあるわけですね。

4:退院できない理由

「え? もう治療が終わっているの場合に、そもそも、なんで病院は退院させないの?」と
思う方もいると思うんですけど、そこには「受け皿」の問題があったりします。

「治療によって、全く精神的に問題のない状態になった」というなら、
そこから社会に戻るのは、ケースバイケースとはいえ、そこまで難しくないでしょう。

でも「治療は終わったが、それなりに精神障害は残っている」と言う場合、
どういう形で社会に戻ればいいのか、端的に言えば「その人の受け入れ先がない」という問題が起こりがちなんです。

元々家族と一緒に住んでいた人なら、まずは家族の意向はどうなのか、
それが難しくて自立していくなら、障害者向けのグループホームなどを頼るということになります。

これって、刑事事件の時にも考えることなんですよねぇ。

事件を起こした人が、裁判で懲役になった場合、
刑務所から戻る時にどこに帰るのか、ということはやはり問題になります。

ただ、刑事事件の場合には、
受刑期間は「懲役〇〇年」という形で決まっているので、
受け皿がなくても、社会に戻されてます。

なので、無期限収容みたいな問題は生じないのですが、
その分、社会に戻った後にうまくいかなくて・・・・・と言うことはままあります。

(ちなみに、西川美和監督の「すばらしき世界」は、
 この辺りの難しさを描いた素晴らしい映画でした。。。。)

そんな事情で、精神科への入院の場合、
治療が終わっても環境調整が難しい場合、
病院がそのまま受け皿を引き受け(させられ)てしまう場合があるのです。

これは入院者の側から見れば、
「いつ出られるかわからない」わけで・・・
そのこと自体、めちゃくちゃ辛いことですよね。

受刑者経験者の方の手記などを見ると、
「無期懲役は、あらかじめわかっているから、耐えられる」ようなところがあるわけで、
「あなたの受刑期間は未定です」と言われたら、たまらないですよね。

5:病院関係者だって辛いんだ

病院側もきついポジションです。
というか、これは好きでやってる役割じゃないですよね。
(実際、そういうフェーズの精神科の報酬って低めですし・・・)

本来、治療が役割の施設なのに、
治療が終わっても「精神障害のある方の滞在施設」として、
機能し続けなければならないという。。。

「いつまでも出られない」「一体いつ出られるんだ!」という
当事者の切実な不満は、病院スタッフに向けられやすいですし、
それに答えられる内容を病院は持ってないわけですから。

このあたりは、もはや医療の役割が終わったのであれば、
障害者グループホームなど福祉領域のこととして考えていく、
政策的に施設設置を進めていく必要がある分野なのでしょうね。

実際、精神科病院が、このような施設を自ら運営するなど、
新しい動きも出てき始めている今日この頃ではあります。

でも、まだまだ精神病院が、
この役割的な矛盾を引き受け続けていると言う現状で、
当事者も病院側も苦しんでいるのかなと思います。

6:担当者会議では・・・・

今回の全国精神保健福祉担当者会議の中では、
「退院請求は、入院している当事者の権利なのだから、
 本人が求めるなら支援して、なし崩し的に行われている長期入院から解放させるべき!」という
真正面からの意見も(そういうキャラの弁護士さんから)出ていました。

同時に、矛盾を引き受けて苦しい立場にある医療機関と、
関係作り(弁護士の動きを警戒しているところも多い)をするところから始め、
双方協力してのモデルケースづくりから始めている弁護士会もあり・・・・というところでした。

全体としては、後者のスタンスの方が多いのかな。
でも、もちろん前者の「原則論」はしっかり持ちながら、と言う感じでしょうか。

私のスタンスは、というと、
やはり「環境調整重視型」になるかな。。。

「とにかく退院を!」というハードランディングだと
「結局、ご本人が辛いことになるかな」と言うところを考えるので、
頑張って、受け入れ先探しをすると言う形ですね。

依存症のファクターがある方なら、
DARCなども一旦の受け入れ先になりえるので、
そういった施設にも相談しながら。。。

生活保護など、経済的な面を支える仕組みにも、
同時に繋がっていく必要があるわけで・・・・
いわゆるソーシャルワーク的な分野ですよね。

何から何まで弁護士ではできないので、
さまざまな方の協力を得ながらやる必要のある仕事だと思っています。

とはいえ、この分野は、
当事者の方の置かれた状況の大変さを思えば、
なかなかやりがいのある仕事だと思って関わっています。

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