こんにちは、最首です。
今日は、最近話題になっている
M&A仲介業者の高額報酬や利益相反問題に触れてみようと思います。
現在日本では、経営者の方々の高齢化に伴って、
中小企業の経営層における世代交代が課題になっており、
その解決策として、
「M&Aを活用した事業承継スキーム」が
官民を上げて推進されている状況にあります。
後継者不在の会社について、他の会社に事業を買い取ってもらって、
従業員の雇用の場を守ったり、ノウハウや営業基盤を引き継ぐことが、
経済全体にとって大事だと言う考え方からですね。
そして、そこでは「M&A仲介業者」という、
事業を譲りたい経営者と譲り受けたい会社をつなぐ
「仲介プレイヤー」が重要な役割を果たしているのですが、
一部の会社の振る舞いに起因して、問題とされていることがあります。
1:高額報酬や利益相反問題がやたらに書かれている
何がどう騒がれているかというと、シンプルにいうと以下の2つ。
・ 報酬が高い!!(高額報酬問題)
・ 売り手からも買い手からも報酬を取る結果、
どっちの立場に立ってるのかよくわからん(利益相反問題)
というクレームです。
高額報酬問題は、相場感の問題のような気もするので、
ともかくとして、まずは利益相反問題が、
従来からのM&Aプレイヤー(弁護士や公認会計士)からは特に叩かれています。
伝統的なM&Aのアドバイザーの立場は「どちらか片側に付いて、その立場で最善を追求するように支援する」考え方なので、
その立場から言うと「両側の立場に立つなんてダメだろ」と捉えられてしまうんですよね。
報酬問題についても、伝統的なM&Aのアドバイザーは、
おおむね「工数ベース(×単価の積み上げ)」で請求するところ、
M&A仲介業者さんは「ディール価格の◯%(を両方から)」って感じなので、
ときに「手数に見合わない(高すぎ!)」って評価されがちなんですよね。
2:いや、それでいいんじゃない?ーマーケットの評価ー
とはいえ、個人的には、今のままでいいんじゃないかと思っています。
多分、仕事のそもそもの考え方が違うと思うので。
M&A仲介の仕事をされてらっしゃる方と話すと思うのですが、
業種としては「不動産仲介」や「結婚紹介所」の業界カルチャーに近いなと思っていまして。
基本的に、その仕事の中核的思想や価値の見方は、
「相性の良い2社についての縁を紡ぐ」というところにあって、
彼らは「どちらかの立場に立っている」訳じゃないんですよね。
そうなると、報酬も手数をベース考えるのではなくて、
「双方の利益(幸福)が生まれた場合にその一部を頂く」と言う形も、
それなりの合理性というか、一貫性があると思うんですよね。
3:縁を紡ぐ仕事の重要性
また、現在の形で
「マーケットが成り立っている(受け入れられている)」ということの意味も
もう少し積極的に見た方がいいと思っていて。
これは、報酬がある程度高くても、双方の立場に立っていても、
「その役割が必要とされている」ってことなんだと思うんですよね。
叩こうと思えば、どこの業界だって、いくらでもポイントは出てきますしね。
(高額報酬問題なんて、弁護士だってそうじゃないですか。。。。)
また「両手取り」という我が国独自の業界慣行が、どうして成り立つかと言うことも、他の国との比較で「おかしい」と言う前に、もう少し良く考えた方がよいと思うのです。
だって、海外で「両手取り」禁止ルールがあるのは、
M&A仲介だけじゃなくて、不動産取引とかだってそうなんですよ。
逆に言えば、日本の文化というか、これまでのマーケットは、
仲介業者に「両手取り」をさせるだけの価値を見出しているんですよ。
それは「縁を紡ぐ」と言う仕事について、
「双方に価値をもたらす仕事」であって「社会的に重要なもの」と、
日本の文化の中で受け止めてきたからこそなのではないでしょうか。
ある意味で、冷徹な「市場原理」よりも、
「人の目利き」を信用する世界が成立してきたと言うか。
ちなみに、このあたりは、
書画骨董のマーケットなんかでもそうなんですよね。
最近でこそ、オークション業者が台頭してきましたけど、
「信用ある目利き(ギャラリーや鑑定人、美術館などのキュレーターたち)」でもって、日本流の市場というものが発展・維持されてきていますから。
4:非難するよりも、支援によって補おう
そして、もう一つ書いておきたいのは、
官民あげてのM&A推進によって、今はこのマーケットは、
一気に広がって「まだまだ未成熟」な状態にあると言うことです。
この点は、長い歴史がある(そしてオーガニックに発展してきた)骨董や書画の世界と比較して、プレイヤーが未熟であっても、仕方ないことでもあって。
そう言う時期には、報酬の取りすぎ問題(時には安すぎ問題、でもこっちはあまり文句言う人がいない)とか、結果として片方に利益が偏ってしまったり(後から「M&Aの失敗」と評価されたりもします)ってことが、ある程度、発生してしまうものなんですよね。
見方によっては、この業界は、そういうところが面白さと言ってもいいかなと。官民あげてとなると「安全安心」とか打ち出したくなるんでしょうけど、そもそも取引の世界に、100%の安心はあり得ないとも思うんですよねぇ。
でも、安心を得たい人は多いから、そのストレスの受け皿というか、槍玉に上がっているのが、今の「M&A仲介業者」なのかなぁと。いや、未熟なのは「マーケット全体」だと思うんですけどね。
個人的には、その解決に向かおうと思うのであれば、伝統的なM&Aプレイヤー(弁護士や公認会計士)は、非難するのではなくて、むしろ、彼らを育てる/擁護するように振る舞った方がいいんだろうと思うのですよね。
いや、厳しく叱りつけるのが「昭和のオヤジスタイル」なのかもしれませんけど、
そんなとこまで「伝統的」じゃなくてもいいじゃないかと(笑)
ということで、マーケットが広がってきている結果、
もはや従来のプレイヤーでは手が回らないこの日本のマーケット。
むしろ新しいプレイヤーに知恵を貸す形で、
市場を支えて行くことが大事だよなと思っている、今日このごろです。
(→ M&Aアドバイザーの方の相談にも乗っております。
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